取得時効の完成に必要な期間
(このページは、改正民法に対応しています)
占有開始の時に善意無過失の場合、10年経過で時効が完成する
占有開始の時に善意無過失でない(善意有過失、悪意)場合、20年経過で時効が完成する
※善意無過失で占有を開始した者が、占有の途中で悪意に変わっても、占有開始時に善意無過失であれば、10年経過で取得時効は完成します。
占有の承継
取得時効は、自分の前の占有期間などを引き継ぐことができます。
例えば、Aが悪意で土地を占有し始め、15年経過した後、AがBに売却した場合、BはAの「悪意」および「15年の占有期間」を引き継ぐため、Bは5年占有するだけで、この土地を取得時効できます。
消滅時効
消滅時効とは、一定期間、権利を行使しないと、その権利が消滅する制度です。
この消滅時効における宅建試験対策は、「消滅時効の起算点・時効期間」、「確定判決後の消滅時効」の2つです。
消滅時効の時効期間
消滅時効の起算点と時効期間は以下の2つがあります。
下表の上段を「主観的起算点」と言い、下段を「主観的起算点」と言います。
起算点 | 時効期間 |
---|---|
債権者が権利を行使できることを知ったときから | 5年 |
債権者が権利を行使できるときから | 10年 |
消滅時効の起算点の詳細
上記の表の上段の通り、消滅時効は権利を行使できるようになった時から時効期間が開始します。
不確定期限のある債権の場合、例えば、「私が30歳になったら、10万円もらえる」という権利の場合、私が30歳になった時点から消滅時効が開始します。
約束の仕方 | 消滅時効が開始する時期 |
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確定期限のある債権 | 期限が到来した時 |
不確定期限のある債権 | 期限が到来した時 |
期限の定めのない債権 | 債権が成立した時 |
停止条件付債権 | 条件が成就した時 |
不法行為に基づく損害賠償債権 | 損害および加害者を知った時 |
ここで重要なのは、人の生命身体の侵害を伴わない不法行為に基づく損害賠償債権は、「損害および加害者を知った時から3年」、「不法行為の時から20年」で時効消滅します。
一方、人の生命身体の侵害を伴わない不法行為に基づく損害賠償債権は、「損害および加害者を知った時から5年」、「不法行為の時から20年」で時効消滅します。
この点は覚えておきましょう。
ちなみに、所有権は消滅時効にはかかりません。
この内容は、宅建試験でも出題されるので、必ず覚えてください!
確定判決後の消滅時効
確定判決等によって時効が更新された場合、主観的起算点・客観的起算点の区別は抜きにして、一律に時効期間が10年になります
時効の援用
時効期間が過ぎたからと言って、自動的に債権が消滅したり、土地が自分のものになるわけではありません。時効が完成した後に、「時効が完成したので、お金を払いません」など主張しないといけません。
これを時効の援用といいます。
時効を援用すると、その効果は起算点に遡ります。
(始めからなかったことになる。始めから自分のものだったことになる)
時効完成後に時効(の利益)を放棄することはできるが、時効完成前に放棄することはできません。
時効の更新
「時効の更新」とは、進んでいる時効期間を、「初めに戻す」ことを言います。
例えば、AがBにお金を貸し、返済期限を6月末日にしたとします。
この場合、Aの貸金債権(お金を金を返してもらえる権利)は7月1日から時効期間が開始し、その日から10年が経過をすると、時効により消滅します。
しかし、5年後に、裁判で訴訟を起こすと、時効期間が初めに戻り、また、一から時効期間が開始します。
時効の更新事由(時効期間を初めに戻すための手段)
裁判上の請求 | 裁判所に訴えて、確定判決により裁判が終了した時点で時効が更新します。 ただし、訴えが却下されたり、取り下げたりすると、時効更新の効果は生じません(時効更新しない)。 ※ただし、時効の完成猶予の効力は生じる。 |
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強制執行等 | 「強制執行」や「抵当権の実行」があったけど、まだ債権が残っているときは、「強制執行」や「抵当権の実行」の手続きが終了した時に時効が更新します。 |
承認 | 時効によって利益を受ける者(上記例では、お金を借りたB:債務者)が自らの債務を認めた場合、時効が更新します。 この承認は裁判外でも有効です。 |
時効の完成猶予
時効期間が満了する直前に、債権を有していることに気づいたとき、短期間で、裁判をおこなして「時効の更新」を行うのは難しくなります。そういった場合に、時効の満了期間を経過しても一定期間だけ時効が完成しないよう猶予期間を与える制度があります。これが時効の完成猶予です。
例えば、AがBにお金を貸し、返済期限を6月末日にしたとします。
この場合、Aの貸金債権(お金を金を返してもらえる権利)は7月1日から時効期間が開始し、その日から10年が経過をすると、時効により消滅します。
その後、9年11か月が経過し、時効完成まで残り1か月時点で、Aが債権があることに気づいて、裁判外で催告(内容証明郵便で請求)をすると、催告をしてから6か月間は時効が完成しません。
時効の完成猶予事由(一定期間だけ時効完成しない)
裁判上の請求 | 裁判所に訴えると、確定判決により裁判が終了するまで時効の 完成が猶予されます。 その後、確定判決を受けると、時効が更新されます。 |
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強制執行等 | 「強制執行」や「抵当権の実行」があると、「強制執行」や「抵当権の実行」の手続きが終了するまでに時効完成が猶予されます。 |
仮差押、仮処分 | 「仮差押え」や「仮処分」があると、「仮差押え」や「仮処分」の手続きが終了するまでに時効完成が猶予されます。 |
協議を行う旨の合意 | 「いつ債務を弁済するのかの協議」を行う旨を、書面で合意した場合、一定期間、時効完成が猶予されます。 |