「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」は、内容が分かれば難しくありません!どのような内容か、分かるようにしましょう!
まず、「居住用財産の買換え等の場合」と書いてある通り、居住用財産(マイホーム)を買換えた場合の話であることは、前提として頭に置いておきましょう!
次に、「譲渡損失」です。
譲渡損失とは?
今住んでいるマイホームを買った時の購入代金が、売った時の売却代金より高い場合の差額が「譲渡損失」となります。
例えば、「4000万円で購入したマイホーム」を「1000万円で売却」した場合、3000万円が譲渡損失となります。
損益通算とは?
「損益通算」とは、「譲渡損失」を「その年の給与所得や事業所得など他の所得」から控除(損益通算)することです。
例えば、給与所得が1000万円あって、譲渡損失が300万円であれば、損益通算すると、給与所得が700万円に減ることになり、所得税も少なくなるということです。
繰越控除とは?
繰越控除(くりこしこうじょ)とは、「損益通算」を行っても控除しきれなかった譲渡損失を、譲渡の年の翌年以降も、損益通算し続けることを言います。
例えば、譲渡損失が3000万円あり、給与所得が毎年1000万円あるとします。
【1年目】 この場合、1年目に給与所得1000万円から、譲渡損失分(3000万円のうち1000万円)を差引いて、1年目の給与所得は0円となります。
【2年目】 2年目は、繰り越された譲渡損失が2000万円(3000万円-1000万円)あるので、
これを2年目の給与所得1000万円から、繰り越された譲渡損失分(2000万円のうち1000万円)を差引いて、2年目の給与所得は0円となります。
【3年目】 3年目は、さらに2年目に繰り越された譲渡損失が1000万円あるので、
これを2年目の給与所得1000万円から、繰り越された譲渡損失分(1000万円)を差引いて、3年目の給与所得は0円となります。
居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除とは?
上記を踏まえて、「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」を解説します。
- マイホームAを5000万円で購入
- マイホームAを2000万円で売却(3000万円の譲渡損失)
- マイホームBを4000万円で購入(マイホームBを買換資産という)
このマイホームA・Bの所有者の毎年の給与所得が500万円だったとします。
【1年目】 「500万円の給与所得」から、「3000万円の譲渡損失」を差引くと(=損益通算すると)、1年目の給与所得は0円となります。
【2年目】 譲渡損失は、2500万円が繰り越されるので、「2年目の500万円の給与所得」から、「2500万円の譲渡損失」を差引くと(=損益通算すると)、2年目の給与所得は0円となります。
【3年目】 譲渡損失は、2000万円が繰り越されるので、「3年目の500万円の給与所得」から、「2000万円の譲渡損失」を差引くと(=損益通算すると)、3年目の給与所得は0円となります。
損益通算を行っても控除しきれなかった譲渡損失は、譲渡の年の翌年以後3年内に繰り越して控除(繰越控除)することができます。
【4年目】 譲渡損失は、1500万円が繰り越されるので、「4年目の500万円の給与所得」から、「1500万円の譲渡損失」を差引くと(=損益通算すると)、4年目の給与所得は0円となります。
損益通算を行っても控除しきれなかった譲渡損失は、譲渡の年の翌年以後3年内に繰り越して控除(繰越控除)することができるので、最大4年間所得から控除(損益通算)できます。
居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の適用要件
- 個人が「住んでいる家屋」を売ること、もしくは「以前に住んでいて、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに」売ること。
- 譲渡の年の1月1日における所有期間が5年超で日本国内にあるものの譲渡であること。
- 買換資産(マイホームB)の家屋の床面積が50㎡以上であること。
- 買換資産(マイホームB)を取得した年の翌年12月31日までの間に「居住すること」または「居住する見込み」であること。
- 買換資産(マイホームB)を取得した年の12月31日において買換資産について償還期間(返済期間)が10年以上の住宅ローンを有すること。
- 売主と買主が、親子や夫婦など特別の関係にないこと(「特別の関係」には、生計を一にする親族、家屋を売った後その売った家屋で同居する親族、内縁関係にある人なども含まれる)