媒介契約とは、「売主と宅建業者」「買主と宅建業者」が結ぶ仲介の契約です。
売主は、自己所有の土地や建物を売りたいけど、自分一人では買主を見つけることができないので、宅建業者に「買主を見つけてください!」と頼むわけです。
一方、買主は、土地や建物を買いたいけど、どんな物件があるか、また、どうやって売主を探したらいいか分からないので、宅建業者に「私にあった物件を探してください!」と頼むわけです。
この時に契約を結ぶのですが、簡単にいえば、「物件が売れたら、〇〇円上げます」「ほしい物件を購入できたら〇〇円上げます」といった契約が媒介契約です。
媒介契約は貸借には適用されない
媒介契約のルールは宅建業法34条に記載されているのですが、このルールは「売買」のみが対象で、「貸借」には適用されません。
つまり、「貸主と宅建業者」との間では、媒介契約書を交付する必要はないわけです。しかし、実務的にはトラブルにならないように、交付する業者が多いです。
媒介契約書の記載事項
では、実際、媒介契約書にはどのようなことを記載するのか?
- 宅地建物を特定するために必要な表示
⇒どの物件を売りたいのか?
- 売買すべき価額または評価額
⇒売りたい物件についていくらで売り出すか
⇒宅建業者が意見を述べる場合には根拠を示す必要がある
- 一般媒介・専任媒介・専属専任媒介の区別
⇒媒介契約の内容が「一般媒介」「専任媒介」「専属専任媒介」にどれに当たるか
- 契約期間(有効期間)
- 解除に関する事項
⇒契約違反を場合、どのような罰金があるかなど
- 指定流通機構へ登録するか否か
- 報酬はいくらか
- 有効期間
- 指定流通機構への登録に関する事項
- 標準媒介契約約款に基づくか否か
媒介契約の流れ
下記は媒介契約を締結してから、売買契約締結までの流れです。
媒介契約と売買契約は異なるので注意しましょう!
- 依頼者(売主)と宅建業者が媒介契約を締結する
- 依頼を受けた宅建業者は指定流通機構に登録する
(専任・専属媒介契約の場合は必ず行う。一般媒介の場合は任意) - 宅建業者は指定流通機構が発行する「登録済証」を「遅滞なく」、売主に引き渡さなくてはならない
- 買主からの申し込みがあった場合、宅建業者は売主(依頼者)に報告しなければならない
- 売買契約が成立したら、「遅滞なく」、取引価格等を「指定流通機構に通知」しなければならない
一般媒介契約
- 複数の宅建業者(不動産会社)に重ねて仲介を依頼することができる契約です。
つまり、甲地を所有しており、これを売りたいと思った場合に、宅建業者Aと一般媒介契約を締結し、さらに宅建業者Bとも媒介契約を結ぶことができるわけです。 - 指定流通機構へ登録しなくてもよい
- 依頼主も自分で購入希望者を見つけることができる(=自己発見取引も可能)
- 有効期間に定めはなく、長くても短くてもよい
- 自動更新も可能
⇒上記有効期間が満了したら、自動的に更新される旨の契約も有効 - 宅建業者は業務の処理状況を報告しなくてもよい
専任媒介契約
- 特定の宅建業者(不動産会社)のみに仲介を依頼する契約です。
つまり、宅建業者Aに甲地の売却の依頼をしたら、有効期間(契約期間)中は、他の宅建業者に売却の依頼をすることができません。 - 指定流通機構へ登録する義務がある(休業日除いて7日以内)
- 依頼主も自分で購入希望者を見つけることができる(=自己発見取引も可能)
=一般媒介契約と同じ
- 有効期間は最長で3ヶ月。3ヶ月を超えて契約しても3ヶ月となる
- 自動更新はできない。自動更新できる旨は無効となる
- 宅建業者は業務の処理状況について「2週間に1回以上」報告する義務がある
専属専任媒介契約
- 特定の宅建業者(不動産会社)のみに仲介を依頼する契約です。
つまり、宅建業者Aに甲地の売却の依頼をしたら、有効期間(契約期間)中は、他の宅建業者に売却の依頼をすることができません。(専任媒介契約と同じ) - 依頼主は自分で購入希望者を見つけて契約することができない(=自己発見取引はできない)
=必ず、媒介業者を通す必要がある
- 指定流通機構へ登録する義務がある(専任媒介契約と同じ)(休業日除いて5日以内)
- 有効期間は最長で3ヶ月。3ヶ月を超えて契約しても3ヶ月となる(専任媒介契約と同じ)
- 自動更新はできない。自動更新できる旨は無効となる(専任媒介契約と同じ)
- 宅建業者は業務の処理状況について「1週間に1回以上」報告する義務がある
標準媒介契約約款
「標準媒介契約約款」には、媒介契約で定めるべき基本事項が網羅されており、上記宅建業法に規定されている記載事項(法律で決められた記載しなければならない事項)よりも細かい内容が定められています。
これは、消費者にとって不利な媒介契約が締結されることを防止することが目的です。
したがって、上記記載事項に「標準媒介契約約款に基づいた媒介契約書なのかどうか」を記載するようにしています。
ちなみに、標準媒介契約約款に基づかないからといって、違法にはなりません。
指定流通機構とは?
売り物件を流通させるための仕組みです。一般的にレインズと呼ばれます。
専任媒介や専属専任媒介については、1つの宅建業者にしか依頼することができません。この業者が怠慢だと、契約期間中、買主が探せず、売主(依頼者)は困ります。そこで、専任媒介や専属専任媒介については、指定流通機構への登録を義務づけています。これによって、売り物件の情報が「レインズ」という不動産物件情報のデータベースに保存され、全国の宅建業者が、その売り物件を知ることができるようになります。
つまり、全国の買主に対して、「こんな売り物件がありますよ!」と知らせることができるわけです。